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2025.05.29

【潮流】旅行業に迫る変革

 JTBが2025年3月期決算を発表したことで、HIS、KNT-CTホールディングス、日本旅行、阪急交通社の旅行大手5社の2024年度決算が出そろった。売上高はJTBの1兆733億円を筆頭に、各社ともコロナ禍前の7~8割水準まで回復した。しかし、利益構造は変化し、JTBは売上高が前期比1.2%減、営業利益が51%減の149億円となる減収減益決算となった。
 営業利益を見ると、KNT-CTも17%の減益となった一方で、HISは約5.6倍、阪急交通社は6.6%の増益となった。営業利益が減益と増益に分かれたのは、投資の違いによる。JTBはグローバル人材確保、システム刷新、DX推進のための戦略的な投資を行い、それが今期の減益要因となった。
 また、JTBの売上総利益、営業利益を見ると、最大の事業基盤とするツーリズム部門の収益性が悪化した。今後、主力の国内旅行が減少していく中で、第三国間旅行が過去最高を記録しているように、JTBは国内・海外・訪日の日本を基軸とする旅行事業からグローバルな旅行事業へシフトする構造改革の途上にあるといえる。
 そうした中で、JTBの「事業基盤機能部門」が155億円の営業損失を計上した。DXやシステム投資、人材投資の負担が極めて重く、山北社長が語る「成長の原動力」への転換には相当な時間を要する可能性が高いと見られる。