記事検索はこちらで→
2019.07.15

香港と一帯一路

 香港の大規模デモがなかなか終息しない。200万人とも言われるデモが立法会の建物を壊すなどして、先鋭化の動きも出始めている。とくに、立法会から場所を中国人観光客が起点となる高速鉄道の西九龍駅や日本人はじめ観光客の多い尖沙咀(チムサーチョイ)などに拡大している。このため、今後の展開次第では、観光需要に影響を受けることが懸念される。
 「逃亡犯条例」改正案に端を発したデモだが、香港が英国から中国に返還されてから22年、保証された「一国二制度」が揺らぎ、中国化への道が進んでいることが背景にあると指摘する声が多い。
 1997年の中国返還時には、中国政府の反対を押し切って、50年後の2047年までは「外交と国防問題以外は高い自治性を維持する」ことを認められた。あと3年で折り返し地点となるが、香港市民にとっては、「中国化」への不安が「逃亡犯条例」改正案で一挙に吹き出したとも言える。
 昨年12月に、初めて開催された「香港インターナショナル・ツーリズム・コンベンション」を取材した。同コンベンションは、中国の「一帯一路構想」と「港珠澳大橋」開通を契機とする「グレーターベイエリア」(粤港澳大湾区)の観光開発をアピールする場で、日本の旅行業界のトップをはじめ、香港、マカオ、中国本土、アジア、世界各国・地域から約1000人のツーリズム関係者が参集した。
 この時に、香港特別行政区のキャリー・ラム(林鄭月娥)長官は、「一帯一路構想のもと、広東・香港・マカオのグレーターベイエリアを開発したい」と力強く述べた。
 香港とマカオはそれぞれがモノ・デスティネーションとしても十分に魅力があり、それに加えて、観光地域を「点から面」へ拡大するものとして、「グレーターベイエリア」を捉えていた。
 とくに、旅行業界にとっては、香港がFIT化している中で、広東省の観光地と組み合わせた旅行商品の造成は、今後の観光開発次第では、日本からの観光需要が見込める。
 また、西九龍駅までの広深港高速鉄道の開通で、香港−広州は2時間、桂林まで3時間で行けるという。香港起点に、中国本土へ多様な商品造成が可能になる。
 一方で、ラム長官の言う「香港をマルチ・デスティネーション化の中核都市とする」との発言が、「一帯一路構想」による中国政府の強い指導によるものであることは容易に想像がつく。
 こうした政治・経済・観光など主要な分野で、中国の影響力が強まっていることへの不安や反発が今回の大規模デモの根本的な要因と思われる。
 1-5月の香港への日本人渡航者数は、前年比11%増の58万人と好調に推移している。港珠澳お大橋の開通で、日本からの旅行者にとって香港とマカオの旅行が行きやすくなり、両地域にとって観光面で相乗効果を発揮することが期待される。
 1-5月の香港への全体の旅行者数は15%増の2973万人で、うち中国本土からの旅行者が18%増の2357万人に達しており、中国本土からの滞在消費額が香港経済に与える影響は絶大だ。
 2047年の返還後50年に向かって、2022年が中間年となるが、中国化への不安、反発、民主化への動きは今後も繰り返し起きるものと予想される。
 但し、今の時代にグローバルなSNSを自国で封じたり、テレビをシャットダウンするような手段がこれからも通用するとは思えない。中国への日本人観光需要がかつての勢いを取り戻すには、逆に中国の「香港化」を望みたいところだ。(石原)