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2017.09.04

日韓観光拡大均衡の道

 北朝鮮によるグアムへの弾道ミサイル発射に関する声明を受けて、日本は上空通過が予想される中四国4県にPAC3を配備したが、8月29日朝に弾道ミサイル「火星2号」は軍民共用空港である平壌国際空港のある順安基地から発射され、北海道上空を飛行し、襟裳岬の東約1180kmの太平洋上の排他的経済水域(EEZ)外に落下したと推定される。
 早朝からJアラートがなり、日本は騒然とした雰囲気に包まれた。こうした状況が常態化することになるのだろうか。報道を見る限り、日本だけが大騒ぎし、北朝鮮と対峙する米国、韓国は冷静に見える。
 北朝鮮情勢の緊迫化、日韓の政治問題があっても、韓国からの訪日旅行者は増加を続けている。7月は前年比44%増の64万4000人、1-7月累計で43%増の404万人が訪日した。この伸び率は、訪日主要市場の中で最も高い。
 一方で、日本からの訪韓旅行者は昨年6月から増加を続けていたが、4月からマイナスに転じ、7月も8.4%源の17万人、1-7月累計は4.2%増の128万人とプラスを維持しているが、毎月増加幅の目減りが続いており、このままマイナスが続けば、暦年でプラスを維持することが難しくなってくる。
 韓国と北朝鮮は現在も休戦状態にある。北朝鮮との緊張が高まることと旅行は全く別物なのかもしれない。北朝鮮のグアム攻撃についても、「韓国にいるよりもグアムにいるほうが安全」とする報道が一部にあったが、常に北朝鮮と向き合う韓国と日本では、やはり非常時に対する意識が違うのだろうか。
 韓国観光公社(KTO)の申相龍東京支社長は本紙のインタビューで、今年の韓国からの訪日旅行者数を670〜680万人近くに達する見通しを明らかにした。一方で、日本からの訪韓旅行者数は今秋以降の回復を予想している。但し、このインタビューも日本本土への北朝鮮ミサイル上空通過の前で、今後、日本からの韓国旅行者はさらに厳しくなることが危惧される。
 申支社長が強調するように、二国間の双方向交流の「拡大均衡」が最も重要で、日本からの訪韓旅行者の回復を期待したいが、こうした政治情勢に翻弄されることが極めて残念だ。
 とくに、半年後の来年2月から平昌冬季オリンピック・パラリンピックが開催される。2018年平昌、2020年東京、2022年北京と続く日中韓3国のオリンピック・パラリンピックを成功させるためにも、スポーツを通じた日中韓の交流活性化が重要になる。
 KTOでは、今年のツーリズムEXPOジャパンに最大規模の出展を予定している。9月のEXPOを契機に、日本から韓国への旅行者をプラスに転じたいところだ。アウトバウンド促進協議会も韓国への旅行商品造成に取り組んでいる。
 2002年の日韓サッカーW杯準決勝の韓国−トルコ戦。東京・新大久保の韓国料理店では、日本と韓国の人々が一緒に韓国を応援していた。あの時に戻ることが必要だ。
 8月26日には、第9回の日中韓文化大臣会合が京都で開催された。平昌、東京、北京のオリンピック・パラリンピック開催を契機に、3カ国で美術展、演劇舞台、障害者芸術展などのイベントに協力し合い、共同プログラムを展開するなどの「京都宣言」に署名した。
 一方で、日中韓観光大臣会合は2015年4月に第7回が東京で開催されてから、その後開かれていない。昨年、武漢で開催される予定だったが延期された。当時の共同声明では、双方向、地域・地方、文化・スポーツ・青少年のそれぞれの交流を官民連携で推進することが謳われた。
 それぞれの政治問題から、日本、中国の訪韓旅行者が減少している。日本と韓国の旅行業界は強固な協力関係にあり、厳しい状況下にあっても、日本から韓国への日本人旅行者の回復に向かって粛々と歩を進めたい。(石原)