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2018.12.11

WING

エアバス、「次世代機開発で日本企業をパートナーに」

設計段階から参画求む、日本から調達拡大に期待大

 ステファン・ジヌー エアバス・ジャパン代表取締役社長兼エアバス・グループ日本代表が本紙のインタビューに答え、エアバスの次世代旅客機開発プログラムについて、「実際に日本企業と様々な話をしているところ」と説明。「次世代機開発プログラムにおいては、多くの部分を日本で製造したいと思っている」とし、「製造することに留まらず、設計段階から日本企業に参画していただきたい」とメッセージを発した。「日本企業には単なるサプライヤー以上の存在、つまりパートナーとして我々のプログラムに加わって欲しい。日本の航空機産業界をパートナーに、エアバスの次世代機開発プログラムを進めていきたい」との考えだ。エアバス全体として日本の航空機産業との関係を深化していきたいと考えており、旅客機分野はもとより、宇宙や安全保障分野など、幅広く産業連携を深堀していく方針を語った。
 ただ、日本の重工メーカーが得意とする機体構造の開発・製造・組立分野。この分野でエアバスは、同社に参加しているフランス、ドイツ、英国などでそれぞれ主翼や胴体などの担当部位を国ごとに分担している。実際問題として、こうしたエアバス機の構造部位を日本企業が担当することができるのか。この点についてジヌー社長は「物理的には可能」とコメント。「様々な基準をクリアしなければならないだろうが、日本で構造を製造することは不可能ではない」との認識を示した。その上で「ここ数年、日本からの調達額は右肩上がりに増えてきた。今後も確実に増えてくるだろう」とコメント。「次世代航空機プログラムならば、また一段階、大きく増加するだろう」との見通しを示し、日本市場からの調達額を一層引き上げていくことになるだろうとしている。
 日欧、そして日・エアバスの関係は今、かつてないほど強力な追い風が吹いている。来年にはいよいよ日系大手キャリアにA380(ANA)とA350XWB(JAL)が納入する予定にあるほか、産業協力面でも経済産業省が後押しするかたちで、日本の航空機産業界との深化が図られつつある。こうした追い風を確実に捉え、エアバスとしては日本企業を機体開発プログラムのパートナーに迎え入れえいきたいと、強烈なラブコールを送っている様相だ。こうしたエアバスの声に応えることができるのか。国際共同開発では、”ボーイング一本足打法”だった日本の航空機産業界は、大きな転換点を迎えたといえそうだ。

 

将来戦闘機プログラム、エアバス試験設備提供も

 

 ジヌー社長は日本で検討が進められている将来戦闘機プログラムにも言及。「(日本の将来戦闘機プログラムが)どのようなものになるかは分からないが」と前置きした上で、「いずれにしても、欧州と日本の考え方は類似しているだろう」とコメント。「有人機と無人機、さらには陸、海、そして宇宙などを統合する将来戦闘機システムのようなものとなっていくのでは」と持論を展開した。その上で、エアバス防衛部門の試験設備が整備されているドイツのマンシングを引き合いに出して、「開発段階では様々な試験を行うことになるが、そうした試験では高額な設備を使うことも少なくない。エアバスが有する試験設備の提供などといった協力も行うことができるのではないだろうか」と見解を示すなど、日本側に様々なかたちによる協力を提案していきたい考えだ。「日本、あるいはどこの国でも同様に、新しいプログラムを立ち上げる際には、納期やコスト面などのリスクを低減すべき。そうした点で、私たちのエアバスの経験を生かすことができるのでは」と、日本の将来戦闘機プログラムにおけるエアバスによる協力提供を呼びかけた。

 

次期中期防・大綱の動向注視
防衛分野の日エアバス協力深化に期待

 

 

※写真=インタビューに応じたエアバス・ジャパン代表取締役社長兼エアバス・グループ日本代表のステファン・ジヌー氏