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2021.04.12

WING

20年度の緊急発進は725回、中国機接近が減少

訓練の実施空域変更か、練度の向上に警戒

 統合幕僚監部はこのほど、2020年度(20年4月1日〜21年3月31日)に航空自衛隊が実施した緊急発進回数が、合計で725回だったことを発表した。これは前年度に比べて222回減少した回数で、中国機に対して急増した近年の実績の中でも特に少ない発進回数だった。しかしこれは、中国軍が訓練を実施する空域を変えたため、との見解。中国軍がこれまで行ってきた訓練など、最近では日本領空より遠方で行うようになり、日本側の緊急発進回数が減ったと分析する。統幕の幹部によると「中国軍が実施する訓練自体は減っていない」として、脅威度に変化がないことを強調し、警戒感を強めた。
 20年度の緊急発進数725回のうち、中国機に対して実施したのは約63%を占め、前年度比217回減の458回となった。ロシア機への緊急発進は約36%で、前年度よりも10回減の258回だった。推定を含めると、緊急発進を行った相手側の航空機は、中国・ロシアとも情報収集機が多かった。しかしながら、その目的や意図については「不明」だとした。機体の特性上、情報収集など何らかの任務を受けて、飛行していたことが考えられる。
 また、統幕が公表した中国・ロシア機の特異な飛行に対する緊急発進は14件だった。そのうち10月2日には、ロシアMi-8ヘリコプターによる北海道知床岬沖の領空侵犯を確認した。Mi-8は数分のうちに領空外へ出ていったが、20年度で唯一の領空侵犯事案となった。さらに12月22日には、中国H-6爆撃機とロシアTu-95爆撃機が連動した共同哨戒飛行が行われた。こうした中・露が連動した日本領空付近の飛行は、近年見られるようになった新しい状況。統幕では、中・露の連動した行動には確実に対応できているとし、新たな脅威が出てきている中でも、領空の防衛が完全に機能していることを強調した。

 南西空の発進回数減少も方面隊別で最多に

 露Mi-8ヘリ領空侵犯、北方領土の演習に関連か

 中・露連動した共同飛行、19年7月以来2回目

※写真=20年12月22日、中国のH-6爆撃機と、ロシアのTu-95爆撃機が共同飛行を行った(提供:統合幕僚監部)