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2018.06.04

WING

NAA松本取締役、アセス準備書で住民説明実施

準備書の施設配置案から大幅変更「あり得る」

 

 成田国際空港会社(NAA)の松本大樹取締役管理部門長は6月1日の定例会見で、3本目滑走路整備などさらなる機能強化において、環境アセスメントの手続きの一環として示した環境影響評価準備書について、住民説明会を行った上で一般からの意見を募集していると説明した。準備書で示した年間発着回数50万回時の空港の施設配置案については、あくまで予測を行う上での想定であることを強調。具体的な施設配置が大幅に変更しても、タキシングの量など大きな変化は表れない見通しで、環境影響評価の案から大きく配置がずれる可能性を示唆した。
 NAAは4月に、空港のさらなる機能強化に必要な環境影響評価準備書を公表した。これは6月11日まで意見募集を行った上で、その意見を反映し、最終案となる環境影響評価書をつくっていくことになる。準備書の中では、50万回時の施設配置案が示され、敷地中央に「H」型の新ターミナルが描かれた。松本取締役によると、位置は「あくまで仮置きのもの」であり、タキシング時の騒音などを考慮する必要があるため、必要だったという。まだ最終決定ではないものの、環境ファクターを一定程度想定して示すため「現時点で候補となる位置を仮置きして、シミュレーションを行っていく」と、環境アセスメントの手続きについて説明した。
 また、環境アセスの結果が全く変わることにならなければ、仮置きの位置を大きく変えることは「あり得る」ことであり、今後の検討の中で決めていく考えを強調した。主に影響すると思われる項目は、騒音のほか、ジェットエンジンからの排気ガスのほか、水、振動、動物、景観など。施設整備計画を変更することで、それらの項目の環境影響が相当程度を超えるような特段の事情がない限り、環境アセスのやり直しには至らない。例えば、滑走路延長が300メートル以上増える、空港敷地が20ヘクタール以上増える、などの用件に該当しなければ、手続きのやり直しには至らないとして、「どこへ施設を動かしても、タキシングの量が格段に増えるなどの影響は、あまり考えられない」との見解を示した。
 さらなる機能強化で、第3滑走路の整備と併せて実施するB滑走路の延伸については、東関東自動車道と重なることになり、東関道をアンダーパスする必要がある。そのためB滑走路の延伸では、東関道に一度迂回する仮の道を造り、その間にアンダーパスの本線を掘り進む。本線が完成次第、自動車を本線へ通してから、滑走路の延伸整備に着手することになるという。
 松本取締役はさらなる機能強化に着手するに当たり、アセス関係の手続きだけでも約1年かかることになるが、同事業は「成田の国際競争力強化」を図っていくとともに、国の目標とする2030年の訪日外国人6000万人達成へ貢献するため、「できるだけ早く実現していかなくてはいけない」と述べ、引き続きスピード感を持って事業着手へ向けた手続きを進めていくとした。さらにNAAとして「空港づくりは地域づくり」との考えを示し、共生共栄の理念をもとに機能強化を進めて、地域と空港が共に栄えていける姿を目指すと語った。

 

 P1立体駐車場7月中旬繁忙期前にオープンへ
 19年夏オープンのP2立体駐車場、今年8月着工へ

 

 松本取締役は、1昨年11月に発表した駐車場整備について、第1ターミナル前面のP1駐車場に立体駐車場工事が順調に進み、夏期繁忙期前の7月中旬にもオープンできる見通しであることを明かした。2017年11月の着工から、半年ほどで建物自体は完成し、今後は塗装、外壁、雨水の排水路、アスファルト敷設、ライン引きなどを行っていくとのこと。同施設は、770台収容が可能で、P1全体で1200台から1.5倍の1800台までキャパシティが増加する。これで、第1ターミナルで発生していた駐車場不足と混雑の解消が期待されるという。
 さらに第2ターミナルの方では、今年8月にP2の立体駐車場整備に着手する。P2には南棟、北棟、北付属棟があり、2400台の駐車が可能となっている。ここに、新立体駐車場を整備することで、さらに700台が駐車できるようになる。こちらは北付属棟の北側で、今のところ従業員用の駐車場となっているが、今年8月に着工する計画。来年夏ごろのオープンを予定する。成田空港の駐車のキャパシティは、空港全体で4400台ほど。それでも夏のピーク時には逼迫する状況となっている。
 P1の立体駐車場は、5層6段の普通車770台が駐車できる施設。エレベーター2基で、障がい者用駐車枠として20台確保する。施工業者はJFEシビルで、事業費は約24億円となっている。P2の立体駐車場も5層6段の施設で、収容台数は700台、エレベーター2基としている。施工はダイワリースで、総事業費が約22億円になる。

 

 外国人は単月初の170万人突破、63ヵ月連続増
 桜観光で近年4月がピークに、発着は4月最高に

 

 2018年4月の空港利用状況は、航空旅客数が前年同月比5%増の347万1866人と、4月最高となった。そのうち国際線は6%増の289万8182人で、日本人が5%増の94万5321人、外国人が10%増の170万5083人、通過客が9%減の24万7778人。外国人は単月初の170万人超となって2013年2月以来63ヵ月連続増となった。国内線については1%減の57万3684人だった。
 発着回数は2%増の2万953回で4月最高。国際線では3%増の1万6722回で4月最高になり、旅客便が3%増の1万4354回、貨物便が5%増の2114回、その他が7%減の254回だった。国内線は4%減の4231回で、うち旅客便が4%減の4142回、貨物便が31%減の40回、その他が18%減の49回だった。
 松本取締役によると、今年夏ダイヤから日本航空がモスクワ線などを増便。タイ国際航空もバンコク便を増便し、好調だったとのこと。また航空旅客では、外国人が初めて170万人を超えたことについて、4月に訪日する外国人の目的が桜を見に来る人が多いため、最近では4月がピークになるとして、過去最高となった結果を分析した。
 また、航空貨物については全体で5%増の19万9164トンで4月最高に。給油量は1%減の36万7012キロリットルだった。

 

《4月路線別出国者数》
▼太平洋線=29万2200人(1%増)
▼欧州線=12万8000人(9%増)
▼中東・アジア線=38万5700人(8%増)
▼中国線=17万9300人(14%増)
▼韓国線=14万5600人(17%増)
▼台湾線=12万9700人(8%増)
▼香港線=13万3700人(8%増)
▼オセアニア線=5万6100人(11%増)
▼グアム線=3万2700人(19%減)
▼アフリカ線=2600人(50%増)

 

※図=環境影響評価準備書で示された、50万回時の施設配置案。あくまで評価のための仮置きで、大幅な変更も示唆(提供:NAA)