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2020.05.25

安心・安全な旅行の到来

 欧州における新型コロナウイルス感染症に対する解除措置を見ていると、日本の解除措置の進む方向がはっきりしていなくて、取り残されるような感覚に陥る。
 欧州では、政府が3段階または4段階の解除措置のロードマップを示し、それに沿って州や県の自治体が決定していく。それが具体化していて、最終段階の旅行・渡航の自由化につながっている。
 日本の場合は、政府が具体的なロードマップを示さないので、各都道府県が個々にローマップを策定しているが、政府が旅行の自由化に向けたロードマップを策定することを期待したい。
 欧州では、既に解除措置の第2段階に入ってきている。6月には屋外活動が全面的に解禁になり、屋内活動も人数の制限はあるものの緩和され、6月中には屋内100人以上の会合も可能になるかもしれない。
 6月中旬には欧州EU域内の国境は緩和され、往来も可能になり、旅行の自由化も見えてきている。
 欧州の解除に対する条件を見ていると、非常に明確だ。とにかく、人と人との間隔を平均1.5m開ける、公共交通機関を利用する場合はマスク着用を義務付け、違反すれば罰金を科す。
 日本の場合は「3密」が基本だが、もっと数字で示したほうがわかりやすい。具体的には社会的距離を2m空けると言われている。「3蜜」とともに、2m間隔(最低1m)とマスク着用をもっと声に出して要請してほしい。39県の緊急事態宣言解除後、残る8都道府県でも公共交通機関や繁華街が混みだし、マスクを着用していな人も目立つようになった。
 厚生省の「新たな生活様式」では、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いを実践例として公表している。2m間隔(最低1m)なら1.5m間隔、マスク着用、手洗いを「義務」に近いように国民運動的に言ってほしい。
 各国の解除措置を見ていると、移動に際しての健康証明書、PCR検査証明書などの提示、携行が目につくようになった。新型コロナウイルス感染症が拡大して、各国が入国制限を厳した時に、旅行者に対して医者の診断証明書などを求めたが、今後、解除措置が緩和されて、出入国が自由化されときには、「私は新型コロナウイルス感染症などには感染していません」とする世界共通の「健康証明書」が必携になるかもしれない。
 世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)のトラベル・ツーリズム産業の再開に向けた新たな国際基準「Safe Travels」、USトラベル・アソシエーションの「TRAVEL in the New Normal」、トルコの「ヘルシー・ツーリズム(健康旅行)認証」プログラムなど、旅行に関する新たな国際基準が発表されているが、世界保健機関(WHO)と連携して、海外旅行のための世界共通の健康証明書が必要になるかもしれない。
 本書に特別寄稿を執筆している風の旅行社の原優二社長は、寄稿の中で、「健康パスポートや免疫パスポートなどを発行し、海外との移動を可能にしよう、という議論も欧州では始まっている。日本も、検討し早期に具体化すべきである」と主張している。全くそのとおりだと思う。
 「新しい日常」の海外旅行とは、どういう旅行になるのか。旅行でイベントリスクが大きいのはテロ、災害、感染症だが、これからはパンデミックに対する「安心・安全な旅行」が必然的に求められる。
 これまでのSARS、MARS、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザなどのように限定的なものはなく、世界的に流行した新型コロナウイルス感染症によって、収束後も衛生・健康面で「安心・安全な旅行」が求められるだろう。とても、喉元過ぎれば熱さも忘れるにはならないだろう。
 旅行者は海外旅行に健康証明書が求められる。旅行者は健康・衛生面で安心・安全な旅行を求める。そのために、旅行会社は健康・衛生面に配慮した安心・安全な旅行商品を造成する。旅行会社ならではの安心・安全なツアーを企画・造成する時が来る。OTAにはできない。(石原)