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2019.01.15

ウイングトラベル

旅行業界のビジネスモデル転換必要

大畑OTOA会長、ゼロベースで価値創出を

 AIやIoT、ビッグデータなどの第4次産業革命が進む中、OTAが台頭、サプライヤーの直販化が加速し、旅行業界も大きな転換期に差し掛かっている。旅行をプランニングする際のプラットフォームが店舗からウェブにシフトし、OTAや異業種を含めて顧客の獲得競争が激化する中で、旅行業界にはビジネスモデルの転換と、新たな価値創出が求められている。旅行商品の仕入手配や企画を現地で支える日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)の大畑貴彦会長に、今後のめざすべき方向性について新春インタビューした。

 

■IT化と直販傾向は加速している

 ITマーケティングの進展により、消費者はインターネットを通じてホテルもエアも自分で簡単に手配できるようになった。予約チャネルが多様化し、国内はもとより海外のレストランでもインターネットで口コミを見ながら予約できる時代。旅先で何を食べるか、その日の気分で選べる時代になっている。いわば消費者の旅行のプランニング時におけるプラットフォームが、従来の店舗型の旅行会社からインターネットにシフトしている。
 顧客接点の獲得競争は激化している。とくに、ニーズの多様化や細分化に伴い、カスタマイズされた情報発信力が問われる競争環境へと変化している。また、ITマーケティングの進展により、従来の旅行会社だけでなく、個人の趣味や嗜好などの情報を持つ異業種のプレイヤーが参入している。彼らは旅行を目的とせず、旅行を手段としてこの業界に参入してきている。
 こうしたマーケットの変化にしっかり対応することが重要だ。実際、米国の旅行業界を見ると、一部を除けばOTAとBTM(ビジネストラベルマネジメント)に集約されており、旧来型の伝統的な旅行会社は淘汰されている。日本を含めた先進国の旅行業界でも同様の動きが予想される。そこで求められるのは、OTAや異業種では提供できない新たな価値、ホスピタリティを提供していくことだろう。

 

■次世代の旅行業界の姿とは
 製造小売業革命といわれる「SPA」に一つのヒントがあるのではないか。これは、商品の企画から生産、流通、販売までを一貫して行うビジネスモデルで、消費者の嗜好の移り変わりを迅速に捉えられる利点があり、ユニクロ、GAP、ZARA、IKEAなどがその代表例だ。
 旅行業界はプレイヤーが多く、企画から販売までの一連のサークルの中に旅行会社やツアーオペレーター、航空会社、ホテルなどが存在するわけだが、市場環境が急速に変化する中で、旅行業界でも「SPA」モデルを追求し、一気通貫したサービスを提供しようという動きが一部の大手旅行会社にある。変化に対応する柔軟性や、提案力や企画力が増す観点でも、SPAモデルは旅行業界でも今後強みを持つのではないか。
 また、旅行業界を企画から販売という一連の括りの中で考えていくならば、ツアーオペレーターというのはメーカーの立ち位置であると考えているし、これまでもそう思って事業を展開してきた。これから世界中の旅行ニーズを捉えてビジネスを展開していく中で、諸外国の旅行に精通したオペレーターというのは存在感を発揮できるのではないだろうか。複数のオペレーターが総力を結集することにより、SPAのような形態が実現可能なのではないかと考えている。

 

■旅行業界の再編が必要と
 機械化が進む中で、我々旅行業界にしか提供できないバリューをどう作るかは大きな課題。旅行のプラットフォームが急速にインターネットに移行する中で生き残っていくためには、M&Aによる業界再編は避けて通れないのではないか。
 現在のように変化が激しい時代には、前例主義は通用しない。何かを踏襲するのではなく、ゼロベースで新たに構築することが必要だ。
 その点でいえば、旅行会社がそれぞれ独自に持っている情報システムは、逆にイノベーションを阻害する要因になっているのではないか。日程表などのフォーマットも、各社毎に全て異なり煩雑だ。しかもシステム投資は億単位に上る。共通化できるところは協力すべきなのではないか。ビッグデータの活用にしても同様のことが言える。
 そうした観点から言えば、この業界には今後、デジタル・マーケティングに精通した人材の確保は急務である。旅行業界に求められる人材像も業界とともに変わる。そうした意味でも発想の転換が必要だ。

 

■ツアーオペレーターにとってのインバウンドビジネスについてはどう考えるか
 インバウンドには積極的に取り組むべきだ。ツアーオペレーターはこれまで、海外で日本人旅行向けのサービスを提供してきたが、インバウンドビジネスではその逆を扱うだけで、仕事の内容は同じ。力を入れればオペレーターに商機があるビジネスだと思っている。
 OTOAの会員でインバウンドを扱っている会員はまだ3割程度だが、もっと参入してもよいのではないか。インバウンドの取り扱いを始めることで、訪日ビジネスだけでなく、海外から海外へのグローバルビジネスへと幅が広がるチャンスも増える。
 一方、日本インバウンドの課題は、自治体を含めた受入先の国際化と人材力の向上だろう。国際化については、語学力の問題だけでなく、どう地域を売り込むか、海外の先進事例をもっと参考にするべきである。日本はインバウンドが急激に伸びた反面、地域の観光政策については予算の使い方も含めて古い体質のままだと感じる。その点、海外で長くビジネスを行ってきたオペレーターとして、海外のノウハウや成功モデルを地域に伝える役割も果たしていけるのではないか。

 

■旅行業界の商慣習の見直しについては
 インバウンド増加など日本でもグローバル化の動きが加速する中で、日本の商習慣が通用しないケースが増えている。また、てるみくらぶの問題を契機に前受金がクローズアップされたが、前受金を運転資金に回すようなことがあってはならないし、そうした旧態依然とした商慣習は襟を正していく必要がある。昔に比べれば改善されてきたとはいえ、グローバルスタンダードにはまだまだ及ばないのが現実だ。
 日本の旅行業のデータを見ても、2016年以降多くの旅行会社が廃業し、4社に1社が赤字とのデータもある。業界のさらなる健全化を図っていく上では、旅行代金の支払いのあり方など、日本の商習慣をグローバルスタンダード化していくべきだと考えている。
 

 

■出入国管理法改正案が成立し、外国人労働者に関する動きも注目されている
 日本の人口減少が進む一方で、外国人観光客や外国人労働者が増加していく流れは加速するだろう。日本は住みやすい国だし、入管法改正によって日本で働く選択肢が増えれば、将来的には日本の人口の3割が外国人になる可能性すらある。そうなれば社会に与える影響は大きい。
 また、日本に来る外国人観光客が増え、日本で働く外国人が増えれば、外国人が日本で旅行ビジネスを始めるだろう。日系企業の在留邦人が安心感から日系旅行会社や日系オペレーターを使うように、彼らも母国語を話す人達に旅行の手配を頼みたいと思うのは自然なことだ。その意味では、50年後の日本の旅行業界は、外国人がメインプレイヤーになっているということがあってもおかしくない。それほど世界は変わりつつある。

※写真=大畑貴彦OTOA会長