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2021.03.16

WING

川崎重工業、航空エンジン生産は19年比50%減

運航時間減でMRO収益に打撃

 川崎重工業航空エンジンディビジョンは、水素航空機用燃焼器という革新的な燃焼器の開発に取り組む一方、新型コロナウイルスパンデミックが同社の民間航空エンジン製造に深刻な影を落とした。
 オンラインで取材に応じた川崎重工業の航空宇宙システムカンパニー航空エンジンディビジョン長を務める越山雄執行役員(越山ディビジョン長)は「我々の収益のなかで最も大きなウェイトを占めている部分が、エンジンのアフターマーケット。MROは航空機の運航時間が非常に重要な要素と捉えている」との見解を示しつつ、コロナ影響で航空会社の運航時間が激減した結果、「運航時間やエンジン整備によって得ることができるアフターマーケット収入が大幅に落ち込み、我々の収益も大きく悪化している」と、現状を説明した。
 「航空会社の運航時間は回復傾向にあるものの、2019年度12月の水準に回復するには数年の時を要するだろう」とコメント。「回復は今のところ国内線を中心に運航されている中小型機は進んできているとみており、一方で大型機の運航路線は国際線が中心であることから、現状でも大半の便が停止している状況で、大型機の運航時間回復には更に長い時を要することになるだろう」と話した。
 新型コロナウイルス感染拡大で財政的に苦しくなった航空会社から、エンジンメーカーに対してもエンジンメンテナンス費用の支払いについて後ろ倒しを要請する動きもあるという。さらに航空会社のなかには、エンジンメンテナンス費用削減の自助努力として、搭載されているエンジンのメンテンナンス期間までゆとりのあるエンジンを使用することで、支出を削減するといった策を講じている航空会社もみられるようになっているという。
 ちなみに、川崎重工業はA320neo搭載用のPW1100G-JMエンジンのMRO事業について越山ディビジョン長は「現段階では参画していない」ことに言及。「新型コロナウイルスの影響で、インターナショナル・エアロ・エンジンズ(IAE)内で基地をどのようにしていくかという話もあり、そのなかで我々も諦めずにいつ参入することができるかなど、検討している」として、新型コロナウイルス感染拡大の影響でPW1100G-JMエンジンのMRO参画に影響が発生していることを明らかにした。

 狭胴機エンジン生産量回復は23年以降

 一方、工場の操業を支えているのは、エンジン量産だ。「大型機、中小型機ともに民間航空機用エンジンの量産は減少しており、大きな操業減になっている」ことを明かした。
 「とくに西神工場は民間航空機用エンジンの量産が中心で、操業が落ち込んでいることから、西神工場から明石工場へ作業者の配置転換を行わざるを得なかった」とし、「昨年10月くらいから、航空エンジン事業から数十名の作業者が同じ明石工場内にあるモーターサイクル&エンジンカンパニーへと配置転換している」とした。
 また民間航空機用エンジンの量産のうち、・・・・・・。

 広胴機エンジン生産も50%減
19年水準への回復は2025年以降

 サプライチェーン支えるべく生産量再配分も

 次期戦闘機エンジン、性能試験実施で役務提供
 国内初フターバーナー付エンジン量産

※写真=新型コロナ禍にあって川崎重工業の民間航空エンジン生産量は前年度比50%減。狭胴機用エンジンは2023年度以降に、広胴機エンジンは2025年度以降に回復することを見込む。写真はPW1100G-JMエンジンを搭載したA321neo(提供:エアバス)