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2020.07.10

WING

情勢で変化続ける警戒航空団、監視情報を一元管理

運用情報隊が情報を一次分析、スピーディな情報循環へ

 去る2019年3月26日に航空自衛隊が新編した警戒航空団は、警戒航空隊の人員を約20人増強した上で格上げとなった。三沢基地、浜松基地、那覇基地に飛行隊を置いて、空中レーダーによる領空の監視を行っている。最近では、中国による緊張を高める行為が目立つようになったため、領空の監視強化が重要視されてきたところ。それを受けてこの度の新編では、司令部のある浜松基地へ、情報を集約する能力を強化した。隷下に運用情報隊を新編して、各飛行隊の空中レーダーから得られた情報の一次分析を充実させて、上層部へより確実な情報を伝えることができるようになった。この体制によって、自衛隊全体での情報処理能力が向上。上層部から各部隊へ伝達する情報も早さ・確度が格段に増し、自衛隊の情報を循環させる能力の向上に寄与することになった。同部隊において、“隊”から“団”へのマイルストーンで指揮を執るのは、団司令の白井亮次空将補。この度、インタビューの機会を得て、部隊の状況や任務などについて聞いた。

 

モットーは不変の3つの心
多様性に根ざした組織力発揮

 

――警戒航空団を指揮する上でモットーとしていること

 

 警戒航空団を指揮する上で、特段心構えをかえていることはない。これまで、飛行隊長や指揮官職に就いてきた中で、自分に課した3つの心構えがあるが、これを変えずに実践するよう努めている。それは3つの“心”。1つ目が“志”で、自分自身をより成長させて、高みを目指すという心構えと、さらに世のため人のため、自分を超越した存在のために尽くすといった志がある。その心を常に持ち、改革意識を持ち続けながら、新しいことに挑戦して、能力の向上を追求するよう指導している。
 2つ目は忠実の“忠”。高い志を持てといっても、部隊には任務がある。改革を進めることで、行っている任務遂行に支障があってはならない。したがって、与えられた任務は忠実に実行せよと指導している。そして指揮官においては、その職責に応えるため、部下が忠実に任務を行うための環境を整えて提供するべきで、常々指揮官にも要望しているところだ。
 3つ目の心は“恕”(じょ)。これは私の好きな孔子の教えで、「我の欲せざるところ人に施すことなかれ」という考えが込められている。やはり航空自衛隊は、多様性に根差した組織だ。常に様々な機能の集合体であると思っている。そのため、その機能を有機的に結合することで初めて戦力になるといわれている。部隊では、最先端技術を取り入れ、さらに自動化・無人化が進んだとしても、やはり最終的には人が運用することになる。各構成員が持つ多種多様な技能や経験をいかに融和させるかが重要。1+1が2ではなく、3にも4にもふくらませて、組織力を発揮するため、和を生む“恕”という考えが必要だ。まずは少なくとも、自分がやられて嫌なことを人にするなという教えから守っていこうということ。この3つの方針で職責を果たしたいと考えている。

 

3飛行隊束ねる組織力強化
運用情報隊が確実に情報分析

 

――今年3月26日には、隊から団へ格上げして警戒航空団となった。以前から変わったことについて

 

活発な中国、米との対立注目
補給強化課題、要となるISR

 

かつてない動き見せるロシア
警戒監視でエビデンス確保

 

E-2Dパッシブ・センサーに期待
様々な相手から情報を獲得

 

イージス・アショア停止の影響
柔軟な対応で十分な備え

 

※写真1=警戒航空団司令の白井亮次空将補(提供:航空自衛隊)

※写真2=今年3月26日に行われた警戒航空団新編行事の記念撮影の様子。E-2D、E-767、E-2Cと、警戒航空団が装備する航空機がそろい踏み。領空を見渡す“目”として、今後一層の活躍が期待される(提供:航空自衛隊)

※写真3=式典で訓示を述べる河野太郎防衛大臣(提供:航空自衛隊)

※写真4=河野大臣から警戒航空団の旗を受け取る白井団司令(提供:航空自衛隊)

※写真5=飛行警戒管制群のE-767(提供:航空自衛隊)