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2018.06.21

ウイングトラベル

●訃報 小林天心氏−現場と学術で観光を牽引

追悼−旅行会社、政府観光局、大学等で活躍

 小林天心氏が6月17日、療養していた長野県諏訪市の病院で死去した。73歳。3年前に胃がんを患い、薬物治療を受けて回復したものの、転移が認められ、今年4月から入院して治療を受けていた。葬儀はキリスト教式で近親者により済ませ、6月20日に荼毘に付した。
 小林氏は1944年10月24日、長野県飯田市生まれ。68年に同志社大文学部社会学科新聞学専攻を卒業。同年プレイガイドツアー入社、常務取締役マーケティング部長、営業本部長を歴任し、97年に退社。
 1998年から2005年までニュージーランド政府観光局日本局長を務めた。2002年から04年まで日本エコツーリズム協会事務局長も務めた。
 2005年には株式会社観光進化研究所を設立。2007年から東京都小笠原観光プロデューサーも務め、観光と環境の問題についても関心が深かった。
 また、同年から北海道大学大学院観光学高等研究センターで非常勤講師、客員教授を務めるなど、様々な役職を兼務して、観光を学術と現場の両面から精力的に研究した。
 2009年から15年まで亜細亜大学経営学部ホスピタリティ・マネジメント学科教授を務め、観光学の研究と同時に、観光を志す学生の指導に当たった。
 小林氏の著作は多数ある。その中で、2015年に亜細亜大経営学部「ホスピタリティ・マネジメント」の紀要論文「論壇−海外旅行自由化50年の個人史−アウトバウンドの流れとともに( A Personal History of Japan’s Outbound Tourism : 1964-2014)」は、その名の通り、日本の海外旅行業界の歴史と、その中に身を置いた小林氏の個人史を重ね合わせたもの。
 本音満載の著書は、海外旅行業界の真実が記され、その中で日々葛藤する著書の姿が浮かび上がると同時に、観光に対する氏の熱い想いと憂いに満ちている。謹んでご冥福をお祈りする。(石原)

 

亜細亜大学ホスピタリティ・マネジメント紀要「海外旅行自由化50年の個人史−アウトバウンドの流れとともに」(小林天心著)
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