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2018.06.14

WING

防衛省、イージス・アショア配備説明で安全性強調

周辺国のミサイル脅威、秋田・山口で理解求める

 

 防衛省は、配備を計画しているイージス・アショアについて、候補地として秋田県の陸上自衛隊新屋演習場および山口県の陸自むつみ演習場を選定するに当たり、両県で去る6月1日に説明を行った。その説明の中で、弾道ミサイルの脅威から全国をくまなく守り抜ける体制の構築が急務となっていること、レーダーを遮蔽しない平坦な場所への設置が必要であることなどを示して、秋田・山口両県への配備の必要性を訴えた。
 防衛省が1日に行った両県への説明には、秋田県へ福田防衛大臣政務官、山口県へ大野防衛大臣政務官がそれぞれ訪れ、県知事をはじめ地元自治体へイージス・アショアの配備候補地および今後の調査について説明したところ。地元の理解と協力を得るため、今後も引き続き丁寧な説明に努めるとしている。
 配備の前提として、北朝鮮には依然、日本を射程に入れる各種弾道ミサイルが多数存在していることなどから、弾道ミサイルの防衛能力向上が喫緊の課題となっている。そうした環境の中で、弾道ミサイルによる攻撃から、国民を24時間365日守り抜く能力を抜本的に向上させるため、防衛省でイージス・アショア2基の配備候補地を検討した結果、秋田県と山口県を選定したという。

 

範囲・遮蔽・地形・インフラから候補地選定

 

 防衛省は、イージス・アショア配備の候補地として、前述のとおり秋田県陸自新屋演習場および山口県陸自むつみ演習場を挙げた。この2ヵ所は、防衛省が行ってきた調査研究によって選定したもので、地元への説明では選定の条件を示している。そのうちの1つが防護範囲の観点。2地点で日本全土をカバーできるとするが、適切な位置に配備する必要がある。仮に秋田県へSM-3ブロックIIA搭載型イージス・アショアを配置した場合、北は北海道、南は小笠原諸島までカバーできる。また同じく山口県へ配備した場合は、関東地方一帯から南西地域一帯をカバーできるようになる。
 第2に、レーダー遮蔽の観点が条件となった。これは、弾道ミサイルを探知するため、山などレーダーを遮蔽するものがあると支障が発生するため、なるべくレーダーを遮らない地形へ設置する必要があるため。
 第3点としては、地形の観点。レーダーと発射台を適切に設置するためには、なるべく広くて平坦な敷地を確保する必要があるとしている。
 4つ目の条件はインフラの観点。レーダーなどを運用するため、電気・水道など安定的な供給が必要になる。そうした供給が見込める場所へ設置する必要があるとしている。
 防衛省は、全国の自衛隊施設などを対象に、これら4つの条件をすべて満たせる場所について、調査研究を進め、その結果として秋田県および山口県を候補地にしたとしている。

 

レーダー安全性強調、総務省の電波防護指針遵守

 

 イージス・アショアが仮に配備された場合、レーダーが与える人体への影響について、防衛省は人体に影響を与えないよう、「電波防護指針」などを遵守して設計・運用を行うとしている。以前、小野寺五典防衛大臣がハワイの試験施設などを視察した際、レーダー稼働状態でも身体に影響がなかったことを強調した。イージス・アショアのレーダーが発する電波は、X線やガンマ線など細胞の遺伝子を損傷するものとは異なるもの。イージス・システムのレーダーがBMD用とするSバンド帯が、無線LANなどと同じ周波数帯域であることを説明した。
 また防衛省ではこれまで、使用するレーダーが人体に影響を与えないよう運用してきたことを強調した。当然、イージス・アショアのレーダーも同様に人体に影響のないよう運用するとした。防衛省は、電波法などの国内法令や、総務省が定める「電波防護指針」を遵守している。この指針は、世界保健機関(WHO)による国際的なガイドラインと合致したものであり、この基準値を満たす限り、安全上の問題がないものとされる。防衛省では、同指針を遵守するため十分に調査を行ってから必要な対策を実施しているとした。
 防衛省は、さらに従来からの取組みと実例を併せて紹介した。イージス艦のレーダーはこれまで、人体に影響を与えないよう運用していると説明。人が存在する地表へレーダーを照射することはなく、イージス・システムを20年以上運用する中で、健康被害について報告されていないとした。また、イージス艦では乗組員がレーダー照射中でも適切な管制によって、上甲板での作業を実施することもあるとして、それでも健康被害の報告がないことを強調した。

 

航空機影響など必要に応じた対策を実施

 

 防衛省は、そのほかの懸念事項についても、住民の不安を解消できるよう、十分な対策を実施する意向を示した。無線局やテレビ受信などに影響が出ないよう、電波法など国内法令の遵守を約束し、さらに電波干渉の調査を十分に行った上で、対策を講じる。
 イージス・アショアと同様のレーダーを搭載するイージス艦では、レーダーを照射している最中でも適切に管制を行うことで、ヘリコプターの発着艦を行うこともできるため、航空機への影響を与えないよう運用することができるとした。また万が一にも航空機への影響を考慮して飛行制限区域を設定する場合でも、ドクターヘリなど緊急時に飛行できるよう、レーダーを停波するなど、必要な対策を実施するとしている。
 騒音の懸念については、実際にレーダーが稼働している状態でも、騒音の影響がほとんどないことが確認されている。騒音の影響は可能性が低いとする一方、万が一騒音を与えてしまった場合など、消音装置を取り付けるなど、必要な対策を講じる構えを示した。
 警備上の懸念に関しては、警察や海上保安庁などの関係機関と連携して、必要な警備体制を取るとした。イージス・アショアは陸自が運用することになるが、重要な防衛装備品として、適切な警備体制を取ることになるとした。

 

日本全国、24時間365日防護できる体制構築へ

 

 防衛省は、北朝鮮の弾道ミサイル発射能力について、数百発発射できる能力を保有していると見ている。発射後には、わずか10分ほどで日本へ到達し、核兵器や生物・化学兵器も弾頭へ搭載できる能力があるとの見方を示している。さらには、発射台付車両の「TEL」や、潜水艦からの発射も可能で、発射前の兆候を把握することがより困難になっていることに加え、同時に多数の弾道ミサイルも発射できる。北朝鮮は日本を奇襲的に攻撃できる能力を開発、保有しているとして、これを懸念する姿勢を示している。さらに、日本周辺には北朝鮮以外の国にも、日本を射程に捉えるミサイルが多数存在するのを確認しているという。
 その中で、日本が弾道ミサイルの脅威から国民を守る唯一の手段が、弾道ミサイル防衛(BMD)システムになる。航空自衛隊航空総隊が一元管理する中、海上自衛隊のイージス艦によって高高度のミサイルの迎撃に対応し、空自のPAC-3が着弾間近の低高度のミサイルに対応する。防衛省ではこれまでにも、イージス艦の増強を図るなど、対処能力の向上を図ってきた。しかし、イージス艦は整備や補給で港へ戻る必要があるため、24時間365日、常に対応することが困難な状況となっている。
 そのため、イージス・アショアを配備すれば、陸地で常時稼動できる。北と西に2基配備することで、日本全国を24時間、365日防護することができるようになる。さらに相手側の攻撃を断念させる抑止力が大きく向上する効果もあるとして、攻撃を受ける危険性を大幅に減少できるとしている。また、仮に攻撃を受けたとしても稼動を継続させ、国民を守ることができるという。

 

※図=イージス・アショア配備時の防護範囲(提供:防衛省)