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2019.10.18

WING

陸自第48普通科連隊、台風19号被災地へ災害派遣

即自23人栃木県へ、予備自含め最大1000人規模招集へ

 防衛省・自衛隊は10月17日、令和元年台風19号の被害に伴って即応予備自衛官を招集し、災害派遣を実施した。陸上自衛隊東部方面隊第12旅団はこの日、宇都宮駐屯地で即応予備自衛官を構成する第48普通科連隊の編成完結式を実施。即応予備自衛官23人を含む126人が、被災地復旧の支援などを行うため、栃木県内の活動地域へ向かった。
 政府は台風19号の被害を受けて、去る14日の閣議で即応予備自衛官および予備自衛官の招集を決定した。河野太郎防衛大臣は、被災地の生活支援の長期化が見込まれるなどとして、予備自衛官、即応予備自衛官の招集を当面200人規模で、さらに最大1000人規模の招集を行うことを決定した。即応予備自衛官の招集は、去年の豪雨災害など記憶に新しいところ。しかし予備自衛官については、2011年3月の東日本大震災以来の招集となっていて、この度の台風による被害の大きさを物語っている

 

高根連隊長「即自の真価問われる」

 

 第48普通科連隊がこの日活動する地域は、栃木県佐野市の佐野西地区と赤坂地区。同地区は、台風19号の予想を上回る降水量によって、秋山川が氾濫するなど厳しい水害が発生した。さらに、水が引いた後には大量の土砂やゴミが取り残され、復旧を阻害する。一刻も早い土砂の除去が必要となった。
 第48普通科連隊長の高根徳通(※高はハシゴ)1等陸佐は、編隊完結式で「即応予備自衛官の真価が問われている。国民が我々に期待をしている」と訓辞を述べた。さらに地域住民へ生活支援を行う即応予備自衛官に対して「普段、それぞれの仕事を行っている中で、本当によく来てくれた。部隊長として誠に頼もしく、また誇りに思う」と労いの声をかけた。また、所属する即応予備自衛官の中には、仕事の都合などにより、参加の希望が叶わなかった仲間たちもいるとして、126人の隊員に対して「ここにいる我々は、その仲間たちの思いも受け止めなければならない」と述べ、災害派遣に向かう隊員たちを鼓舞した。

 

被災した長野県から招集、周囲の理解に感謝

 

 編成完結式の後には、重機によって活動を行う即応予備自衛官の訓練が実施された。これは実際の作業で使用する重機に対する習熟と併せて、保有する技術の高さを確認するため行うもの。即応予備自衛官の藤井勝則1等陸曹は、長野市でコンクリートプラントの企業へ務め、普段から大型車の運転や、重機の操縦に従事する。訓練では的確にショベルカーを操縦して、高い技術力を見せた。
 今回の招集で東日本大震災以来、2度目になるという藤井1曹は、自衛官として8年間務め、松本駐屯地の第13普通科連隊に所属していた。「少しでも早い時間に(被災地へ)入って、生活支援など、皆さんと近い現場で活動できるよう、自分たちが持っている能力とパワーで頑張りたい」と災害派遣への意気込みを見せた。今回の台風被害を受けて、招集の連絡が届く携帯電話が手放せなかったという。しかし、招集の第1報を受けたときには「正直に言えば準備が完全にできていなかった」という。自身が住んでいる長野県内でも、台風の被害が大きく、実際に県内の友人から家屋の水没被害の報告を受けた。そんな中でも「会社や家族、有人など、周囲の理解があって、スムーズに招集の準備を行うことができた」とのこと。会社では訓練などへの参加にも理解が深く、「非常に心強い」と話し、支援への思いをみなぎらせた。

 

被災地の爪痕、街中に大量の土砂が堆積

 

ほかの仕事を持つ即自隊員、来てくれたことに感謝

 

※写真1=第48普通科連隊編成完結式で訓辞を述べる高根連隊長。常備自衛官と手前側の即応自衛官が隔てなく整列する

※写真2=栃木県佐野市の被災地へ出発する第48普通科連隊

※写真3=インタビューに応じる高根連隊長

※写真4=今回で2度目の招集となった即自の藤井1曹。普段から重機を取り扱うスペシャリスト

※写真5=被災地で土砂の除去作業を実施する