記事検索はこちらで→
2018.03.19

軽井沢スキーバス事故の教訓

 全国旅行業協会(ANTA)は、4月1日から重大事故支援制度付きの旅行災害補償制度をANTA会員に対して導入する。2016年1月に発生した軽井沢スキーツアーバス事故を受けて、会員からの要望が強かった保険に重大事故支援制度を付加することで、加入を促進する。同制度に加入した会員は緊急事故発生時の保険による補償と、万全な事故処理対応を24時間365日体制で受けられる。
 ANTAは2016年1月の軽井沢スキーツアーバス事故後、同年10月に「旅行業重大事故支援システム」を導入した。しかし、同システムは旅行保険制度とは別のため加入者は100社程度にとどまった。この時に、会員からは重大事故支援制度と旅行保険をセットにしてほしいとの要望が強く、それに応えるために、経営推進委員会、旅行災害補償制度部会で検討し、今回、こうした形でまとまった。
 同制度は国内・海外の募集型・受注型企画旅行、国内・海外の手配旅行、訪日旅行を対象とし、重大事故発生時に中小企業が多い会員の危機管理の対応支援を行う。同制度を受けられるのはANTA会員で、旅行災害補償制度、海外企画旅行補償制度に加入した旅行が対象となる。
 重大事故支援制度は、平時は対策支援を行い、重大事故発生の有事は緊急対策チームを組織して、ANTA会員の事故処理対応を支援する24時間365日体制の重大事故支援システムのサービスと保険を同制度加入会員に提供する。サービスには現場、関係者、マスコミ対応など重大事故に関わる全てが含まれる。
 具体的には、死亡者や重傷者が含まれる重大事故時に、事故対応専門会社のチームが会員会社の事務所や事故現場に行き、旅行業者が行うべき対応を全面的にサポートする。サポートする専門家の派遣費用は無料、掛かった諸費用は保険で補償する。手配旅行の場合は諸費用は会員負担となる。
 ANTAでは、重大事故支援制度における「重大事故」の定義を1件の事故で1名以上の「死亡」、1名以上の「通算3日以上入院」と規定し、これに保険が適用される。国土交通省の「重大事故」の定義よりも適用範囲を広くしたという。
 重大事故発生時に必要となる諸費用が、保険でこれまでより広く適用される。諸費用には被災者・家族の救援費用、食事代、ANTA・関係団体・同業者による応援、臨時雇入れなどの人件費・物件費・弁護士相談費用、マスコミ対応費用ほかが含まれる。
 ANTA会員5600社のうち、現行の旅行災害補償制度利用社は3700社で、年間旅行件数20万件、旅行者640万人が対象。ANTAでは、重大事故支援制度付きの旅行災害補償制度の導入を広く周知し、ANTA会員の加入を促進する。
 軽井沢スキーツアーバス事故を教訓とし、絶対に風化させないためにも、多くの会員が同制度に加入することを働きかける。
 重大事故に関しては、大手企業でもその対策に平時から費用を掛けている。中小企業では、一度重大事故が発生すれば、情報収集と多岐にわたる対応は並大抵のことではない。
 今回の重大事故支援制度では、事故対応専門会社が、平時は海外安全情報の配信、重大事故対応マニュアル策定・提供、緊急時対応セミナー開催し、重大事故発生時は事故処理専門家の派遣、被災旅行者の救援、現地派遣を含む家族対応、メディア対応、事故情報の収集、在外公館等を含む関係官庁、保険会社との折衝・連携などのコンサルティングを行う。また、24時間緊急サポートデスクも設置されて対応する。
 ANTAによると、重大事故援支制度付きの旅行災害補償制度の導入は、わが国で初めてとなる。旅行会社の信頼性を高めるためにも、多くの旅行会社から加入することを期待したい。(石原)