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2018.07.23

海外旅行は「再成長市場」

 今年上半期(1-6)の日本人出国者数は、前年同期比4.3%増の878万3400人を記録した。このまま、順調に推移すると、2012年の1849万人を超えて、過去最高の1860万人を超える勢いを示している。1900万人は難しいが、何とかそれに近いところまでいき、2020年の2000万人へ弾みをつけたいところだ。
 韓国、中国をはじめアジア各国・地域へ日本人旅行者が伸びていることが貢献しているが、2000万人、さらにはその先の2500万人に向けて、日本人海外旅行市場の成長を示したい。
 欧米では、アジア各国をインバウンド拡大の最大市場と見ている。中国、韓国、東南アジア、さらにはインドなどに対してプロモーションを展開している。これは、訪日インバウンドも同じで、主要15市場の中でも中国・韓国・香港・台湾・東南アジアが日本の観光立国を支えている。
 今年下半期の訪日外国人旅行者数は、前年同期比15.6%増の1589万8900人で、年間3000万人を超えることは確実視されており、2020年の4000万人がほぼ射程に入った。
 しかし、インバウンドが伸び、アウトバウンドが低迷していることによる「観光不均衡」はますます拡大傾向にあり、「日本一人勝ち」からバランの取れた観光政策が今後は求められてくるだろう。
 2017年の主要市場をみると、日韓は訪韓231万人・訪日714万人。今年は相互交流で1000万人が目標だが、その中で訪日300万人を至上命題としている。日中も訪中268万人に対して訪日736万人で、既に日中交流は1000万人を超えているが、訪中はビジネス需要が高く、観光需要の拡大が課題である。
 日中、日韓は訪日旅行の急成長と政治問題による訪中・訪韓旅行の冷え込みが影響して一気に逆転したが、その他の国・地域もアウトとインが逆転している。
 アウトとインが拮抗して理想的な関係と言われた日台も17年は訪台190万人に対して訪日456万人と差が広がり、今年は何としても訪台200万人が目標となる。日台交流目標の700万人は達成できる見通しだが、訪台200万人・訪日500万人はアウトとしては残念な数字ではある。日本・香港間も訪香港123万人・訪日223万人と2017年で100万人の差が付いた。
 東南アジアもマレーシアは既に逆転し、フィリピン、タイなども差は確実に縮まりつつある。
 米豪市場もインバウンドの成長に伴い、アウトとインの逆転現象が目立ち始めた。既にオーストラリアは訪豪44万人・訪日50万人、カナダも訪加30万4000人、訪日30万6000人で、今年は確実に訪日旅行者が上回るだろう。
 米国もハワイとグアムの数字が入っているので、アウトバウンドの方が当然多いが、米本土からの訪日旅行者と米本土への訪米旅行者を比較したら、実際には逆転しているのではないか。トランプ大統領が観光に熱心だったら、「観光不均衡」と言い出すかもしれない。
 だが、米国旅行業界では、日本は「成熟市場」と言えば聞こえはいいが、「成長の見込みのない市場」と見られており、今後の期待感は薄い。逆に、経済成長している中国・韓国、さらにはアジア、インドを「新興市場」として積極的にプロモーションしている。欧州も同様に日本を「成熟市場」と見ている。
 しかし、中国は別として、日本より人口の少ないアジアの国・地域から多くの旅行者が訪日するのをみると、これらの国々へ日本人が旅行に行かないのはやはり問題があると言わざるを得ない。人口60万人のマカオから日本に12万人が訪問し、人口1億2000万人の日本からマカオに33万人というのは、普通に考えて変ではないか。
 アジアとともに、もう一度、経済を成長させなくてはならないとしたら、アジアと一緒に、海外旅行を再び成長曲線に戻すことが必要だ。日本の海外旅行は「再成長市場」になると確信する。(石原)