記事検索はこちらで→
2020.04.13

生き延びるために

 新型コロナ感染症の国内拡大を受けて、安倍首相は4月7日に「緊急事態宣言」を7都府県に発出し、ゴールデンウィークの5月6日まで、感染者7〜7割減を目標に、在宅勤務、事業者に営業の自粛、国民に外出、地方への移動の自粛などを求めた。
 そして、安倍首相は「雇用と生活守り抜く」として、総額108兆2000億円の緊急経済対策を実施することを表明した。その中で、雇用の維持と事業の継続には財政支出22兆円、事業規模80兆円が計上された。
 旅行業界が要望していた経済支援策としては、雇用の維持は、休業申請による雇用調整助成金の支給額引き上げが盛り込まれた。緊急対応期間は4月1日から6月30日の3カ月間だが、助成率は中小企業は5分の4、大企業は3分の2に引き上げられ、さらに従業員を解雇しなければ、中小企業は10分の9、大企業は4分の3まで引き上げられる。
 旅行業界では助成期間を200日まで延長することを要望しているが、過去に例を見ない危機的状況であり、過去最大、前例のない緊急経済対策を実施するとするなら、新型コロナウイルスの感染状況を見ながらとしても、延長は認めるべきだろう。
 トラベル懇話会の会長を務める原社長の風の旅行社は、緊急事態宣言期間が終わる5月6日まで臨時休業に入っており、海外・国内・訪日の全ての旅行が催行できない状況では、休業することが最大の得策となろう。
 大手旅行会社も緊急事態宣言を受けて、店舗の休業に踏み切っており、今回は中小の旅行会社もさることながら、所帯の大きい大手旅行会社の方が影響は大きく、HISは完全臨時休業に踏み切った。
 雇用の維持とともに、必要なのは当座を凌ぐ運転資金だが、資金繰り対策では、中小・小規模事業者にして、無利子・無担保の融資枠を確保するとともに、金利負担及び返済負担の軽減を図るため、既往債務も実質無利子・無担保融資への借換を可能とするとした。
 地方公共団体の制度融資を活用し、民間金融機関でも実質無利子・無担保の融資を受けることができる制度を創設することも決まった。
 ただ、安倍首相も指摘していたが、どんなに無利子・無担保・返済猶予があっても、借りた金は返さなくてはならない。今の現状では、いつ返せるかの見通しがつかない。
 そこで登場したのが「持続化給付金(仮称)」の創設だ。補正予算の成立を前提に、事業収入が前年同月比50%以上減少した場合、中小企業は上限200万円、個人事業主は上限100万円の範囲内で、前年度の事業収入からの減少額を給付する。
 ただ、旅行業界にとっては、売上が50%減どころの話しではなく、ほとんど売上の見通しが立たない状況だ。したがって、本当は売上減に対する個別補償が必要ではないか。
 安倍首相は「個別補償ではなく、困難な状況の事業者に現金給付を行いたい」とし、減収で厳しい状況の中小企業、小規模事業者、個人事業者への現金給付、無利子・無担保・5年間元本返済猶予、税や社会保険料猶予、雇用調整助成金の支給により、事業運営と雇用の維持を図ることを強調しており、現時点で個別補償の考えはないことを示した。
 また、持続化給付金の対象条件について安倍首相は、「今回、多くの分野で突然ほとんど収入が、7割、8割、あるいはゼロに近くなった方々がたくさんいる。そこで、今後、この年末までの間に、今までと比べて収入が半減していれば出すという設計になっている」とし、中小の旅行会社はほとんど該当すると見られる。
 給付金は新型コロナウイルスの影響で売上が前年同月比50%以上減少していることを証明する書類を用意した上で申請する。オンライン申請で2週間後に交付される。補正予算の成立を踏まえると、5月中には交付される見込みだ。とにかく、V字回復の反転攻勢までは、雇用調整助成金と持続化給付金でしのぎ、それでも厳しければ、民間金融機関からの無利子・無担保・返済猶予の資金繰りで乗り切るしかない。(石原)