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2020.03.30

国内旅行の分かれ道

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策は、さらに新たな段階を迎えた。究極の対策と言ってもいいかもしれないが、諸外国からの入国禁止、諸外国への出国禁止、そして外出禁止の国々が増加した。ウイルスの国内封じ込め、国外からの水際対策で、感染者の拡大を徹底的に抑える。
 とくに、感染者が爆発的に増加しているヨーロッパがこの対策を実施し、北米、中南米、オセアニア、アフリカへと広がっている。また、新型コロナウイルスの封じ込めに成功したと見られていたアジアの国々も、欧米からの帰国者を中心に再び感染が拡大したことで、水際対策と国内封じ込め対策を強化している。
 日本は学校の一斉休暇、大規模イベントの自粛要請、在宅勤務の推奨などで、感染者は増加しつつも、欧米のような急激な拡大には至っていない。PCR検査の実数が少ないという意見もあるが、死亡者数、症状が出で病院に行く人数を見ても、現時点では、ある一定の増加にとどまっていると見るべきだろう。
 しかし、政府の専門家会議で爆発的増加(オーバーシュート)の可能性、小池百合子東京都知事が都市封鎖(ロックダウン)の可能性に言及するなど、欧米のように、ある日を境に急増する可能性は大いにある。
 小池知事は専門家の見解を踏まえて、3月23日に「ここ3週間が分かれ道」と語り、4月12日まで換気の悪い密閉空間、多くの人の密集、近距離での会話が発生する行動を避けるとともに、ライブハウスやスポーツジムなどの施設利用、イベント開催の自粛を要請した。
 小池知事が23日に会見した日に東京都の感染者が1日の過去最多の16人発生して、感染者数は愛知県を抜いて2番めになった。翌24日にはさらに17人発生し、北海道を抜いて都道府県で最多の感染者を出した。
 しかし、その後の状況を見ると、それ以前と都民の行動は変わっていないように見える。政府が2月26日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、イベントの2週間中止・延期・縮小等を要請した後は、在宅勤務が増え、通勤電車は明らかに空いていたが、2週間を経て、次第に緩和されてきている。
 小池知事の会見後も通勤電車は混んでおり、飲食店や国内観光地は、新型コロナウイルス感染症が発生する前とは比べようもないが、徐々に増えてきている。「オーバーシュート」と「ロックダウン」は流行語のように知れ渡ったが、そのイメージが映画のようで、現実感に乏しくて恐怖感が薄れるのかもしれない。
 世界各国のライブカメラを見ると、欧米の有名観光地に誰一人としていない光景が映し出される。これが日本、東京でも起こり得る。
 アジアには、非常事態宣言が出される前に首都から地方へと人々が流出している国があるという。非常事態宣言で出ると首都がロックダウンされるという情報が飛び交い、地方から首都へ上京した人々が出身地に帰っていると、現地に在住の日本人に聞いた。
 政府の新型コロナウイルス対策本部と東京都がもっと連携しても良いのではないか。北海道の新型コロナウイルス感染症対策が一定の評価を得たが、北海道は独自の経済圏を持ち、道と道民が協力して感染の封じ込めに効果を得た。これに対して、東京都は小池知事があれだけの発言をしたにも関わらず、都民はほとんど動いていないように感じる。
 プロ野球は4月24日、サッカーはJ3リーグが4月25日、J2が5月2日、J1が5月9日開幕をめざす。ゴールデンウィークに向かって人が動き、国内旅行の回復が始まる。それが実現する前提条件は、4月12日までに爆発的増加が発生しないことに尽きる。ゴールデンウィーク前に国内旅行が再び動き出すかの分かれ道になろう。(石原)