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2020.03.02

旅行業界もここが正念場

 新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。2月25日の世界保健機関(WHO)の発表では、中国国内の確定感染者は7万7780人、死亡者は2666人に上り、うち湖北省は感染者6万4786人、死亡者2563人で、香港とマカオを含む全中国の感染者の83%、死亡者の96%を湖北省が占める。
 統計の仕方が変更になったりするので、中国の数字の捉え方は難しいが、額面通りに受け取れば、累計はともかくとして、確定感染者数は減少傾向にあるようで、新たな感染者の数もマイナス傾向を続けている。
 その一方で、新型コロナウイルスの感染は世界に広がりつつある。日本発着クルーズのダイヤモンド・プリンセスの船内感染により、日本は中国に次ぐ感染者数となった。WHOではダイヤモンド・クルーズの感染者を国内感染とは別個に扱っている。
 ダイヤモンド・プリンセスは船籍が英国、船会社が米国ということもあるが、日本発着クルーズツアーで、日本人が最も多く乗船し、治療も日本で行っていることから、メディアでは日本の感染としてカウントされている。
 日本は2月25日現在、国内感染157名、クルーズ船感染691名で、合計848名。そして、ここに来て、急激に感染が拡大しているのが韓国で、この時点で確定感染者は977名だが、既に1000名を超えた。次に、イタリアも感染者が拡大し、ミラノやベネチアなどで200名を突破した。
 新型コロナウイルス感染症は中国、アジアから北米、中東、ヨーロッパへと拡大しつつある。このため、感染者がまだ出ていない国々は、水際対策として感染当事国への渡航、観戦当事国からの入国に制限を掛け始めている。
 日本の感染者が拡大することに伴い、日本に対する渡航制限を実施している国々が増えてきた。当初はミクロネシア連邦、サモアなど太平洋の島嶼地域が14日以内の渡航制限だったが、南米、中東の国々が日本を14日以内の規制対象とし、東南アジア諸国も日本に対して検疫、スクリーニング検査などを実施している。
 日本をはじめ感染者が多い国々からの渡航者に対して、14日間ルールを適用している国・地域が増加している。こうなると、日本に対して渡航制限していない国々でも、一般消費者から見ると、旅行に行っても入国できなくなるのではと不安になるだろう。
 実際、ミクロネシア連邦が日本からの入国に14日間ルールを適用した時に、ミクロネシアとマリアナ・サイパンを混同して、マリアナ政府観光局に問い合わせが殺到した。ミクロネシアとサイパンを間違えて報道したメディアもあったという。
 訪日中国人旅行者からの感染、中国からの帰国者の感染、クルーズ船内の感染という感染ルートが分かる段階から、感染ルートの特定が難しい国内二次感染が国内の一部に発生し始めている。これが広がれば、全国に感染が拡大することが懸念される。
 政府・新型インフルエンザ感染症対策本部は、ここが正念場として、2月25日に感染防止への基本方針をまとめた。イベント開催については、主催者に「感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況等を踏まえ、開催の必要性を改めて検討するよう要請し、イベント等の開催は現時点で政府として一律の自粛要請を行うものではない」とし、開催の可否は主催者の決定に委ねられた。
 しかし、「外出自粛やイベント自粛の要請などが、大規模な感染拡大を抑える分かれ目になる」としたことから、主催者側のイベント自粛が相次いだ。そこで、翌26日には同対策本部は1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であるとして、多数が集まる全国的なスポーツ、文化イベントは大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は中止、延期、規模縮小等の対応を要請した。
 イベントは小さければいいというものではないだろう。外出やイベントは自粛、人が集まるところは避ける。ひいては旅行の自粛につながる。こここ1〜2週間は旅行業界にとっても正念場になるだろう。(石原)