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2019.12.23

民間交流の1年

 2019年を振り返ると、あっという間の1年だった。2018年も早かったが、毎年、1年が早くなっているように感じられる。
 2018年は「災害の年」だったが、今年は前年以上の「大災害の年」となった。50年に一度、100年に一度、かつて経験したことのない自然災害が頻発し、これはもう激甚災害が起きることを想定して、災害に強い強靭な日本列島を再整備していくことが、国民の生命と財産を守ることではないかと思う。
 来年は台風の被災地への観光復興、火災被害にあった首里城・沖縄の観光支援から旅行業は始まる。被災地への旅行業の重要性は大きく、社会貢献を果たしたい。
 海外旅行はこの時点でも年間2000万人を達成していない。9月までの実績を見ると、12月の後半には2000万人達成はほぼ確実と見られていたが、10月が香港デモと日韓情勢により香港と韓国への旅行者が大きく減少し、11月以降もその影響を受けている。
 それでも過去最高は間違いなく、来年は被災地の観光復興とともに、海外旅行「ポスト2000万人」の幕開けとなる。そのためにも、香港デモの収束と日韓問題の解決を願いたい。年が改まれば気持ちも変わる。楽天的ではあるが、香港のデモも一時よりも収まってきており、日韓情勢も歩み寄りに近づきつつあるようだ。
 今年、印象に残ることとして、令和の始まり、新天皇の即位が挙げられる。とくに、多くの国民が新天皇・皇后陛下の誕生を祝福したことは、隔世の感がある。昭和・平成・令和を経て、皇室と国民の距離は近づいた。
 一方で、安倍政権は長期化により緩みが生じている。森本・加計、大臣の失態、桜を見る会などの問題を見ると、不公平感が広がり、政治と国民の距離は離れた。
 訪日旅行は日韓情勢問題以前に伸びが鈍化し、2020年までの4000人の達成を厳しいと思われたが、日本製品不買運動に訪日旅行もやり玉に上がり、韓国からの訪日旅行者が急減した。それにより、韓国の航空会社の経営に影響を及ぼしていることは皮肉だが、九州を中心に観光業者が影響を受けている。
 日本政府としては想定内なのかもしれないが、民間に与える影響は少なくなく、日韓両国で解決の道を歩んでほしい。
 但し、こうした状況が起きようとも、日韓の観光関係者で観光交流回復・拡大に向けて、連携して努力していることは高く評価したい。これは、香港も、香港の影響を受けているマカオも同様であり、こうしたことで交流人口が減少することは残念でならない。
 政治問題であらためて思い知ったのは、何が起きようとも「民間」は粛々と連携・協力して事業を進めていくということだ。旅行業界はテロをはじめとして、そのことはブレておらず、今後もその姿勢を貫いていきたい。
 2019年で最も印象に残ったことは、ラグビーワールドカップ日本大会だった。ヨーロッパ、オセアニア、南北アメリカから多くの外国人が来日し、熱狂の渦と爽やかな風を運んでくれた。そして、日本人にラグビーの楽しさを教えてくれた。
 試合の前から日本各地で、多くの訪日外国人と地元日本人との交流が生まれた。試合が台風によって中止になるなど残念な出来事もあったが、試合はなくても選手が被災地でボランティアに励み、心温まる国際交流が生まれた。
 訪日旅行はマイナスの状況が続いているが、ラグビーW杯は国際交流の素晴らしさ、楽しさを教えてくれた気がする。それは来年の東京オリンピック・パラリンピックに続き、その後は2022年北京冬季五輪、2023年ラグビーW杯フランス大会、2024年パリ五輪と世界の大会へとつながる。その時は日本人が世界に出て、国際交流する番だ。こうしたビッグイベントもインバウンドとアウトバウンドのバランスの世界で成り立っている。(石原)