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2019.09.16

羽田は近く、成田は安く

 羽田国際線発着枠の増枠がいよいよ来年から始まる。1980年代に羽田沖合展開事業がスタートして、羽田空港は今や4本の滑走路、国内線第1、第2ターミナル、国際線ターミナルを有し、5本目の滑走路の整備まで取り沙汰されている。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を経て、日本の首都圏の「顔」は名実ともに羽田空港になるだろう。
 羽田空港の拡張、国際化の最大の課題は、「羽田と成田をどうすみ分けるか」にあったと思う。羽田の国際化が進むほどに、成田の存在が希薄になる。そこで様々な議論がこれまでなされてきた。
 例えば、羽田を国際近距離線、成田に国際長距離線を限定する時代もあった。羽田は昼間時間帯が近距離アジア・ビジネス路線、深夜早朝時間帯が長距離線に限定したりした。
 要するに、発着枠の限界もさることながら、羽田の国際線が広がるほどに、成田が影響を受けることが分かりきっており、羽田国際線を限定することでバランスを取ってきたとも言える。
 それ以前には、旅客機能を羽田空港に集約して、成田空港を貨物専用空港にする、民間空港を羽田空港に一本化して、成田空港を自衛隊の供用飛行場にするなど、思い切った議論もあったようだ。
 羽田で国際線を利用した人なら分かると思うが、時間の短縮もさることながら、海外へ行くときに精神的な負担が羽田と成田ではまるで異なる。羽田なら国際線でも気軽に行けるが、成田だと重い腰を上げなくてはならない。
 これは帰国する時も同様で、羽田に着けば何とかなる気がするが、成田だと帰宅が遠く感じられる。先の台風15号の時に成田空港が「陸の孤島化」したが、足止めされた方々は心身ともにご苦労されたと思う。
 成田・羽田のすみ分けについては、ビジネスと観光などの「需要」、長距離と近距離の「方面」などで分けるのは無理があった。そこで、「価格」にシフトする。高価格路線は羽田空港、低価格路線は成田空港を主体に運航する。成田はLCC用の第3ターミナルが整備され、LCCの受け入れが加速した。
 羽田沖合展開整備が始まった頃は、需要といえばアウトバウンドだった。それが、訪日アウトバウンド主体に変わった頃から一挙に羽田がクローズアップされた。
 羽田空港は都心に近く、日本の国内路線のハブ空港であることから、今後の訪日旅行者の地方分散化のためにも羽田はさらに拡張が進んでいくだろう。
 デルタ航空をはじめFSCの航空会社が成田から羽田にシフトするのは、ビジネス需要、プレミアムエコノミー需要を収益性の柱に置く上では致し方ないことだ。
 一方で、成田はどうなるのか。羽田と比べて遠く、時間が掛かる。24時間運用空港ではない。都心までのアクセス手段が少ないなど制約が多い。羽田空港の利便性が向上するほどに、成田空港の制約が浮き彫りになる。
 そこで、成田空港は10月下旬の冬期スケジュールから、A滑走路の運用時間が24時までに1時間延長されることを受けて、中東方面の路線が深夜出発になるなど、深夜の成田発着が増える。これに伴い、鉄道・バスの交通機関も深夜の成田発着を増便する。
 成田空港は羽田空港の国際線拡張に伴い、これからも存在意義を問われる。住宅も学校も近郊から都心に回帰していく中で、首都圏から遠いハンデはさらに大きくなる。
 成田が生き残るには、羽田よりも利便性の高い空港になるしかない。それには、事業者と利用者のトータルコストをもっと安くすることだ。成田国際空港会社とともに、地方自治体・地域住民も一体となって、事業者、利用者の利便性向上をめざしてほしい。(石原)