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2018.12.03

外国人受入れ、旅行も変わる

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け、出入国管理法改正案が衆議院を通過し、参議院の審議を経て、12月10日の今国会期末までに成立する見通しとなった。若い単純労働者、試験が通れば家族の帯同者も受け入れ、永住もできる。日本の歴史的な転換点のようだ。
 民主党政権や自民党リベラル派政権ではなく、自民党の中でも保守的な政権と目される安倍政権下で、「外国人移民拡大」への道を開くことになるとは、何とも皮肉めいた気もするが、日本の少子高齢化による労働力不足、地方過疎化の急激な進行の中で、外国人労働者を早急に受け入れる以外に、日本経済・社会を維持する道がないということか。
 観光立国政策による2020年4000万人、2030年6000万人を目標とする訪日外国人の次は、「永住外国人」の拡大となるのか。
 日本の第一の開国は明治維新、第二の開国は第二次大戦後の戦後復興、第三の開国はテクノロジーとイノベーションによるグローバル化と思っていたが、第三の開国の核となるのは「大量移民の受入」なのかもしれない。
 既に、スポーツ・文化、経済・社会など様々な分野で、日本の国際化は進んでおり、かつて「日本は単一民族国家」と言って、批判された政治家もいたが、日本の内なる国際化は、外国人の受け入れ拡大で欧米並みに加速することになろう。
 日本の総人口は2017年に1億2680万人で7年連続減少。うち3515万人が65歳以上。総人口は2055年には1億人を割って9744万人、2065年には9000万人を切ると推計される。そのときには65歳以上が3400万人以上と3人に1人が高齢者という事態を迎える。
 労働力人口の不足は深刻で、2014年の6587万人からら2020年には6314万人、2030年には5800万人と15年間で12%減の約800万人減少すると予想されている。
 労働力人口不足を補うために、女性・高齢者の雇用促進、外国人労働者の受入拡大、さらにはIoT、AIをはじめテクノロジー・イノベーションの活用などが挙げられる。
 ただ、日本の次には韓国、中国とアジア新興国が少子高齢化、労働力人口減少、人手不足の時代を迎える。その意味で、外国人労働者の受入拡大は人手不足の深刻化もさることながら、今をおいてないのかもしれない。
 さて、「国際的な国家」の道を歩む日本で、産業界はどのような方向に進むのか。日本特有の法規制、商慣習はますますグローバル化する。航空業界は利用者利便が最優先され、国内航空会社の優位性はなくなっていく。旅館業界は従業員はもとより、利用者も訪日外国人だけでなく、在住外国人にも対応したサービスが求められる。
 旅行業界はどうなるか。大手旅行会社はグローバル化を進めているが、これからは国内在住の外国人企業家が生まれてくる。例えば、訪日外国人を顧客とする民族系のオペレーターは、外国人労働者の拡大に伴い、在住外国人を対象に国内旅行、海外旅行を手掛ける。
 仮に、総人口の1割、2割と外国人労働者が増えれば、この市場は様々な分野で大きくなり、新たな旅行マーケットが生まれる。
 現状でも、コンビニエンスストア、飲食店、ビジネスホテル、量販店などは外国人就労者が支えている。高級デバートでも訪日外国人に対応するため、外国人従業員を雇用している。
 日本人と外国人の文化・風習の差は大きい。外国人が「日本化」するのではなく、日本が「国際化」していくのではないか。そこにビジネスが生まれる。外国人が経営する旅行会社も誕生する。日本の旅行業界も外国人の雇用が拡大し、内からの「国際化」が急速に進む時代が来る。(石原)